人には相談しづらいシリアスな夫婦のこと、経済的な悩み。専門家に相談したいけど、どこに相談したらいいのかわからない。そんな悩みを抱えるママたちに、ベリーベスト法律事務所のママ・パパ弁護士が答える全3回の連載シリーズ。第1回のテーマは「離婚」です。
前の記事「①養育費・財産分与・慰謝料について」はこちら
教えてくれたのは
安達里美
(ベリーベスト法律事務所 弁護士)
中学2年生の娘を持つママ弁護士。母子家庭で育った自身の経験から、単なる事件解決だけでなく、親の離婚に直面した子どもの気持ちに寄り添うアドバイスなども行う。離婚問題や不貞慰謝料請求などの男女問題、家族の問題、未払残業請求や解雇無効請求などの労働問題、痴漢や盗撮などの性犯罪を中心とした刑事事件、交通事故事件などを扱う。
―離婚をするにあたって、子どもがいると親権をどうするかという問題がありますが、親権を決める際に注意したいことなどありますか?
子どもの親権をどちらが持つかは、離婚する時に必ず決めなければいけないことのひとつです。そこで絶対にしてはいけないのが一時的のつもりで親権を渡してしまうことです。「今は生活が苦しいので、まずは夫に親権を渡して、自分で働いてある程度の収入を得るようになってから引き取ろう」というケースですね。
一度決めた親権者を後で変更するには、裁判所での手続きが必要になります。当人同士の合意だけでは変更できません。人の気持ちは変わるものなので、その時は同意していても、長年過ごしていくうちに愛情がわき、「そんな約束したっけ?」と言われるケースはたくさんあります。
―専業主婦だと収入がないわけですが、親権を決める時に不利にはならないのでしょうか?
裁判所は、子どもが生まれてからお世話をしてきたのは誰か、というのを重視する傾向にあります。ですから、専業主婦できちんと子育てをしていて、その質や量が相手(夫)に勝っていれば、収入は親権を決める際のネックにはなりません。
―でも収入がないと、やっぱり不安はありますよね…。
そうですよね。でもそのために養育費があるので、足りない分は自分で働いて、あとは手当や支援などで生計を立てることはできます。「収入がない」という理由だけで親権を諦める必要はありません。
「離婚時の養育費・財産分与・慰謝料について」はこちら
―親権は母親が有利ということでしょうか?
今は男性側も育児に参加する方が増えてきたので、男性側から親権を取りたい、という相談が確実に増えてきています。実際、育児もきちんと分担しているケースだと、裁判で男性側の方が親権者になることもあります。
双方とも親権がほしいという場合はやはり揉めることになるので、それを避けるためには親権者にならない方に、お子さんと十分に交流する権利や機会を与えることが大切になってきます。
―離婚後の子どもとの面会における取り決めで注意したいのはどういうところでしょうか?
なかなか難しいとは思いますが、大人の事情や感情で「会わせたくない」というのではなく、そこは子どもを第一に切り替えていただけたらと思いますね。もちろんDVが原因の離婚など、特別なケースを除いて、になります。
あとは、お子さんも中学生や高校生になると、部活が忙しくなったり友達との時間が楽しくなったり、あるいは思春期による心の変化で子ども本人が会いたがらなくなったりということもあります。小さいうちは月に2回会っていたけれど、月1回でも厳しくなってきた、ということは普通に起こりえるので、そのあたりも想定しておきたいところですね。
―それを元配偶者に伝えるのは難しそうですね…。
その通りです(笑)。生活を共にしていない保護者は、子どもの成長を間近で見ていないため、「元配偶者が嘘を言っているんじゃないか」「子どもがそう思うように仕向けているのではないか」と疑ってしまうんですよね。ですので、私が相談を受ける場合は、そういった子どもの成長に合わせて状況が変わっていくことも理解してもらうように説明しますし、取り決めにも記します。
―そういったアドバイスもしてくれるんですね。
離婚について弁護士に相談すると聞くと、「配偶者と戦う」というイメージがあると思いますが、第三者を介すことは離婚後の関係性を良好にするための有効な手段でもあります。離婚後も子どもの親としての関係は続けていかないといけませんので。
面会の件もそうですし、経済的な面でも、例えば「養育費は5万円」という結果は同じであっても、そこに辿り着くまでの過程が、その後の関係を築くうえでとても大事になってきます。
次の記事では「離婚時の話し合いをスムーズに進めるためには?」を解説
取材・文/門司智子
提供:ベリーベスト法律事務所
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