コロナ禍に入って1年以上が経ちました。子育て中のママたちもストレスを抱えた日々を送っていると思います。
出口が見えない“withコロナ”といわれる時代をどのように暮らしていけばいいのでしょうか。山梨大学教授で小児の公衆衛生に詳しい山縣然太朗先生にアドバイスしていただきました。
(取材日:2021年2月25日)
目次
A. コロナ禍で、私たちは不自由な暮らしを強いられています。そうした中でも、各方面の研究によって色々なことが分かってきました。まずは現状を整理してみましょう。
新型コロナウイルス感染症には様々な特徴がありますが、その中でも私たちに深く関わるものとして下記(※)が挙げられます。
子どもがかかりにくいのには、明確な理由があります。新型コロナウイルスは、ヒトの細胞にあるACE2受容体を入口にして感染しますが、この受容体が子どもには少ないため、感染しづらいのです。(※変異株については現在調査中の段階です)
また③については、アジアでは欧米のようなハグ、キスといった接触機会が少ないことも感染抑制に貢献しているようです。
感染は主に飛沫で起きるため、マスクの着用、こまめな手洗い、換気、密を避けるなどの行動が必要になります。ここまでは現状のおさらいですが、問題は、感染への恐怖から過剰に反応する例が見られる点です。「マスク警察」「他県ナンバー狩り」といった例も報道されましたが、これらは「多様性」という感覚の欠落により起こるものです。
コロナ禍においては、最低限の対策を施したら、あとは人それぞれ。その違いを否定するのは行き過ぎといえます。
A. 長引く自粛生活が、子どもの心身に何らかの影響を及ぼすことは以前から指摘されています。懸念されるのは主に下記の点です。
人は適度に日光を浴びないとビタミンDの生成ができず、骨が弱くなるなどの問題が起きます。運動も健康な体づくりには欠かせず、肥満の問題にも関わります。また、幼児期に規則正しい生活を送ることの重要性は言うまでもなく、ゲーム・スマホ依存の危険性は広く知られている通りです。
加えて、心の発達の面で懸念されるのが「社会性」の問題です。社会性は、人と人との関わりの中で育まれるもの。その機会が少なくなれば、何らかの問題が生じるのも想像に難くありません。マスクで顔を隠すことで子どもは大人の表情を読み取れず、自らも無表情になっているとの報告もあります。
子どもにとっては、何気ない遊びも命を育むことに繋がります。「不要不急」という言葉がよく使われますが、子どもの日常生活で不要なものなどありません。本当にやむを得ない時以外に、これらの機会を奪ってはいけないのです。
これは保護者だけでなく、団体や企業も同様です。親子が集まる場では運営側が最低限の安全を提供し、感染対策に過不足なく努め、保護者はその対策内容と子どもの成長とを考えた上で、外に出るか家に留まるかを判断すればいいのです。そして、こうした行動は誰も否定するべきではありません。
A. 今後も、手洗い、マスク着用など、行うべきことは変わりません。同時に、自分たちで応用を利かせていくことが必要です。
例えば真夏のマスクは、運動や作業をする際など、熱中症のリスクを考えると外した方が良い場合もあります。その場の状況を考えた上で、子どもたちの「遊び」や「学び」、前述の多様性といったこともふまえて、柔軟に対応していきたいものです。基本的な感染対策を守りつつ、どう行動するかを考えること―これこそが今持つべき「生きる力」だと思います。
「ゼロリスク」を求めたり、不安や恐怖だけを抱えてもマイナスにしかなりません。メディアの報道などにも目を向け、最新の情報を仕入れながら、正しい知識をもとに行動していくことが大切です。
(※)参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の”いま“についての10の知識」、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議『新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言』」ほか
山梨大学
やまがた ぜんたろう
山縣 然太朗 教授
コロナ禍で求められるのは「冷静さ」と「正しい知識」です。大変な日々が続きそうですが、子どもたちの育ちに必要なこと、つまり「今までやってきた全てのこと」が一日も早くできるよう、対策を続けていきましょう。
【プロフィール】日本公衆衛生学会理事、第27回日本疫学会学術総会会長、日本小児保健協会常任理事。公衆衛生学、疫学、人類遺伝学を専門とし、小児保健や母子保健の分野でも幅広く活動。主著に「子育て世代包括支援センターと地域づくり~健やか親子21(第2次)の中間評価を踏まえて」[季刊]監事2020年など。
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