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おっぱいを卒業するとき

母乳育児の電話相談をしていると、母乳育児中のおかあさん方から「おっぱいをやめようと思っているけど、どうやったらいいですか?」とご質問を受けることがしばしばあります。皆さん、迷ったり悩んだりしていることなんだなあ、と日頃感じています。

もうそろそろ、おっぱい止めたいな、と思っている方、一緒に考えていきましょう!

おっぱいを止めるには?

母乳をやめたい、やめようと思う理由は皆さんさまざまだと思います。でも、実際にやめる前にちょっと考えてもらいたいことがあります。母乳をやめることを「断乳」と言ったり、「卒乳」と言ったりしますね。母子手帳にも以前は、「断乳は済みましたか?」といった健診の質問があったのですが、今はなくなり、「断乳」という言葉も消えました。離乳も含めて、赤ちゃんの成長にも個性があって、一人ひとりその道筋は違うため、個別性を大事にしていこうという考え方です。つまり、イメージとしては、「断乳」は何らかの理由でやむを得ず母乳を飲みたい赤ちゃんのおっぱいをやめてしまうこと、「卒乳」は母乳を飲んでいる赤ちゃん自身が、〝もうおっぱい、いらないよ″というサインを出して自然に離れていくこと、いったところでしょうか。

もちろん、現代は、仕事をしているおかあさん方も多く、職場復帰が近づいてきたり、
赤ちゃんの預け先の方から母乳はやめるように言われることもあると思いますし、お母さん方の状況も色々あることでしょう。ゆったりと母乳育児を続けられる環境ではないかもしれません。でも、赤ちゃんにも個性があるように、母乳育児の続け方にも人それぞれ色々な方法があります。フルタイムで働きながらでも、おっぱいを飲ませ続ける方法は選択できるのです。ですから、本当に今、おっぱいをやめるときなのか、お子さんにとっておっぱいが卒業できるときなのか、よくよく考えて決めてほしいな、というのが私の願いです。

母乳育児をされているお母さん方はもう、十分感じていることだと思いますが、母乳を飲んでいる赤ちゃんにとって、おっぱいは大好きなお母さんそのものであったり、こころのより所となっているものですものね。

どうやって止めればいいの?

さて、では、母乳をやめることを決めている方にむけて、実際にどのようにするのかお話ししていきましょう。

いざ、母乳を飲ませるのをやめてみた方にとって、意外とびっくりされるのが、乳房がパンパンに張って痛くなってしまう、という事実です。実際にやめる時に多くの方が経験されることです。もうほとんど出ていないと思っていたのに、1日数回しか飲んでいなかったのに、とおっしゃるんですね。おっぱいの仕組みは、それまで毎日作られていたように母乳を着々と製造してきてくれます。1日分は24時間できちんと溜まってきますので、飲まなくなった分は乳房にとどまり、パンパンに張ってくるのは時間の問題、というわけです。

その時点で、搾った方がいいのか、ということもよく質問を受けます。その際は、いいえ、なるべく搾らない方がいいのです、とお答えしています。

そうは言っても、石のようになったおっぱいは痛くてたまりませんし、痛すぎて触るのも怖いぐらいになっています。ほんとうは、なるべく搾らない方が、母乳を減らすためにはいいのですが、そうも言っておられないので、ほんのちょっとだけ、少しずつ搾るのがコツなのです。ほんのちょっと、というのは、硬くなっている乳房の表面が少し柔らかくなる程度に、です。思い切りスッキリするほど搾ってしまうと、その分また、母乳は作られてきてしまい、いつまでたってもパンパンの張った状態が良くなりません。

ここで、使う分だけ作られる、というおっぱいの仕組みを利用します。母乳が溜まって張ったままの状態が続いていると、母乳製造の指令室である脳が、「もう、過剰生産になっているから、母乳の製造を減らしましょう」という命令をして分泌が減っていきます。

ある程度おっぱいが張るまではなるべく触らず、かなり張ってきた状態で我慢ができなくなったら少しだけ搾ります。これを繰り返していくことで、数日から1週間ほど経てば、かなり落ち着いた状態になってくると思います。

また、途中で痛みを軽減するために乳房を冷やすことはOKです。冷やすことは、母乳製造スピードを抑える方向にもいくのでその点でも効果的です。温めるのは逆効果ですので、気を付けてくださいね。ただ、寒い季節では、冷やすことが気持ちがいいとは限らないので、冷やすことが心地良いと感じならば、冷やしてくださいね。無理して冷やす必要はありません。それと、やめようと努力しているあいだは、いつもより、ご飯などの炭水化物や甘い食べ物や飲み物を控えめにする方がベターです。余分なカロリーや水分は摂らないことが乳房の張りを強くしないことにつながります。

おっぱいを卒業する前には、お子さんにおっぱいをやめることを、よく繰り返しお話ししましょう。お母さんの気持ちを伝えようとすることも大切な手続きだと思います。そして、いつもより、一緒にくっついて過ごし、よく相手をしてあげてくださいね。おっぱいがなくなるときは、お母さんもお子さんも寂しい気持ちになるのではないでしょうか。寝る時におっぱいがないと、ぐずられてとても大変かもしれません。その時には時間をかけて、ずーっとお話ししたり、抱っこしてあげたりと工夫が必要ですよね。それが、大変だなあ、と思う方は、もう一度、今おっぱいをやめるときかな、と最初にもどって考えてみてくださいね。

今日は、おっぱいをやめるときの方法について一般的なお話しをしましたので、ご自分でおっぱいをやめるときの乳房のお手入れがうまくいかないと感じる方や、不安な方は、お近くの乳房ケアをしてもらえる産科や助産院の助産師にぜひ相談してみてください。

助産師 鄭香苗

勤務助産師。総合病院での看護師、助産師経験を経て、助産師として産科クリニック勤務。
現在、大学院看護学修士課程修学中。

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