地震などの自然災害はある日突然やってくるもの。そんなときにも頼もしいママパパでいるためには、日頃から防災意識を持って準備をしておくことが大切です。3児のママで防災士のわたなべ えりかさんに、絶対におさえておきたい3つのポイントを教えてもらいました。
教えてくれる人:わたなべ えりかさん
茨城県出身・福岡県大野城市在住の防災士、防災教育コーディネーター、保育防災スペシャリスト。中3、小5・年長さんの3人のママ。2011年に起きた東日本大震災の際に茨城で被災。まだ小さかった長男と避難した経験をきっかけに防災のプロを目指す。抱っこおんぶ講師、ベビーダンス講師としても活動中。
避難所に行けば「どうにかなる」は大間違い
東日本大震災のとき、私が住んでいた茨城県も震度6弱で大きな被害を受けました。家の中はぐちゃぐちゃになり、夫は仕事で不在。そんな中、「避難所に行けばどうにかなる」と、当時11ヶ月だった息子を抱っこして家を飛び出しました。
ひび割れた道路を恐る恐る歩き、やっとの思いでたどり着いた避難所は、地震で屋根が壊れてしまい立ち入れない状態。愕然としました。
「自分の子どもは、自分で守る」が前提
その時の私は第一避難所しか把握しておらず、他の避難所がどこにあるのかがわかりませんでした。途方にくれる中、みぞれも降ってきて、息子は空腹と寒さで泣くばかり。とりあえずその日は夕方に帰宅した夫と3人で車中避難をすることになりました。
「避難所に行けばどうにかなる」は大間違いだったんだ、私自身がしっかり準備をしてこの子を守らなくてはいけないんだ、と痛感。
この経験がきっかけで私は防災士の勉強を始めることになったんです。
乳幼児ママパパのための
\防災3つのポイント/
1.大切なのは「心の備え」
「防災」と言うとつい防災グッズなどの「物の備え」ばかりに目が行きますが、まず備えたいのは「心」。
災害は突然やってくるもの。いざという時に行動が取れるかが大切です。
◎普段から災害をシミュレーションしておく
突然災害に遭うと、ほとんどの人は動けなくなり「凍りつき症候群」になってしまいます。そんな中で、いつもしていない行動はできません。子どもと避難ごっこをする、避難経路の危ないところをさがす防災さんぽをするなど、日頃から繰り返しておくことが大切です。
◎ハザードバップだけに頼らず「自分を知っておく」
まずは自治体が発行している「ハザードマップ」の確認を。ただし、過去にはハザードマップの危険区域外で被害があったケースもあります。地域によっては小さな小川やかつて水路だった場所が想定されていない場合も。自宅の近くを散策し、どんな危険が考えられるのか自分自身でも想像してみましょう。
子どもと一緒に練習しよう!
だんごむしポーズ
小さな子どもを落下物から守る「だんごむしポーズ」を知っていますか?ママパパはもちろん、子どもは急にできないので、普段から繰り返し練習しておくことで、いざという時に子どもを守ることができます。
子どもの肩、手足を大人の太ももの間に入れる
頭頂部ではなく後頭部を守ることが大事
ランドセルを使った身の守り方
2.自宅を最強の避難場所にする
自宅の安全を確保しておくのはもちろんですが、自宅に倒壊などの危険性がない場合は在宅避難になります。いつでも避難生活ができる準備をしておきましょう。
◎おうちの中で安全な場所をつくる
地震が起きたとき、自宅の中で一番安全なのはどこか把握していますか?安全なのは次の4つがない場所のこと。少しでも多く「安全地帯」をつくりましょう。
- <安全地帯の4原則>
- 落ちてくる物がない
- 倒れてくるものがない
- 移動してくるものがない
- 割れるものがない
◎災害時に最も困るのはコレ!「トイレ問題」に備えよう
災害時の物の備えというと、食料や飲料に目が行きがちですが、困る人がとても多いのがトイレの備え。持ち運べる「携帯トイレ」と自宅の便座にセットする「簡易トイレ」の2種類がありますが、在宅避難が可能なら男女ともに扱いやすい簡易トイレが断然おすすめです。
便座にセットするタイプの「簡易トイレ」
「簡易トイレ」は家族全員の1週間分のセットを購入するとなるとすごい金額になるので、消臭袋(排泄袋)と凝固剤をそれぞれ大量買いしておくのがわたなべ流です。
3.毎日の習慣で「備えない防災」を実現!
日常で使う物が災害時でも役に立つ「フェーズフリー」を実践すれば、いつだって安心。 特に子どもは「いつも使っている物」しか使ってくれない、なんてこともあるので、使い慣れた物が防災グッズにもなることが大切です。
◎いつもの「ママバッグ」を非常持ち出し袋にする
子どもの物はマザーズバッグへ。一例を見てもらえば普段のお出かけの際にも必要な物ばかりなことがわかるはず。ポイントは帰宅したらすぐに補充すること!いつものアイテムが災害時にも使えると、親も子も安心です。
- <防災対応ママバッグの一例>
- 着替え
- タオル
- 授乳ケープ
- ミルク・飲み物
- おもちゃ
- オムツ・おしり拭き
- だっこ紐
- おかし・離乳食
- 子どもの心が落ち着く物(お気に入りのアイテムなど)
- 母子手帳のコピー(記入がある部分のみ)
◎防災ポーチを持ち歩けば、いざというときも慌てません
大人が使うものは防災ポーチへ。こちらも自分たちに合ったもの、使い慣れたものを用意しましょう。
- <防災ポーチの一例(わたなべさんの場合)>
- めがね
- 携帯トイレ
- 生理用品
- おりものシート
- 常備薬(ばんそこう等も含む)
- ライト
- ホイッスル
- SOSカード※
- モバイルバッテリー
- アルミブランケット
- 簡易食料(ラムネ、羊羹など)
- 水
- ハンカチ
- ティッシュペーパー
- はさみ
- 袋
- マスク
- ウェットシート
- 紙石鹸
- 消毒液
- 化粧水
- メイク落とし
- 鏡
- カイロや熱中症対策グッズ(季節に応じて)
- ペン
- おもちゃ
※SOSカードとは…家族写真の裏に、アレルギーや持病、緊急連絡先などの個人情報を記したカード
防災グッズだけでなく、飲食の備蓄も食べ慣れているものをローリングストックしておくのがおすすめです。
今回お話を聞いたわたなべさんの講座では、すぐに実践できるママ・パパのための防災を教えています。もっと詳しく知りたい方はわたなべさんのInstagramをチェックしてみてくださいね。
構成・文/田村麻記
写真提供・情報監修/わたなべ えりか