今や出産した女性の3割が発症するという産後うつ。どんなに健康的で明るい性格でも、出産を機に陥る可能性があることが分かっています。
ママ自身が経験した産後うつについて、先輩ママ3名に本音で語り合ってもらいました。
津留由美さん
(1才男の子のママ)
流産を経験したのち、長男を無事出産。その後産後うつを発症。
前田香子さん
(4才男の子、2才女の子のママ)
長男を出産した後、産後うつの一歩手前に。
産後うつを疑ったのはいつ頃?
八尋:今思えば、帝王切開が決まってからです。出産後は、「陣痛痛かったでしょ?」と聞かれるのも嫌だったし、慣れない子育てにも落ち込んで…。毎日泣いていました。
津留:私は40才の高齢出産だったのでとにかく不安で。産後1週間くらいから涙が止まらず情緒不安定になるし、次第に子どもが可愛いと思えなくなってきて。沐浴すらやる気が起きなくて、母から「しっかりしなさい!」と言われたり。とにかく逃げ出したかったです。
前田:私はうつ状態とまではいかないけど、里帰り出産後、自宅に戻ると孤独を感じて辛くて。まだ友達もあまりいなかったし、自分の時間は子どものお昼寝の時くらいで、常に気が張っていました。SNSではみんな楽しそうだし…。
八尋:私もSNSでニコニコと育児をしている友達を見て、それが本来あるべき母親の姿なんだって落ち込んでましたね。
前田:友達の子と成長を比べて落ち込むことも多かったな。
津留:SNSっていろんな情報が入ってきて、とても便利な反面、危険…。
一同:そうそう!
八尋:人と比べちゃうし、SNSは見ないのが一番ですね(笑)。私は全身麻酔の帝王切開だったので、普通分娩じゃなかったことが負い目になっていて。友達にも会いたくないし、完全に心を閉ざしていました。
津留:「子ども、可愛いでしょ?」と言われると、素直に受け入れられなかったな。「可愛いけど大変よね」と言われた方が気持ちが楽でした。
一同:うんうん!
「途中からSNSはもう見ない!
と決めました」
パパの様子はどうでしたか?
前田:夕方くらいに子どもが泣き止まない時間があって。そうなると追い詰められて、パパがいないことが不安で自分も泣いてました。帰る時間が分かれば早めに連絡をくれましたけど。
八尋:もちろん悪気もなかったし、私が大変なのはちゃんと理解をしてくれてはいたんですが、パパが一度「家にいたのに、なんで散らかってるの?」と言ったことがあって。家事も満足にできない私ってダメなんだと落ち込みました。次第に私の様子がおかしいのを察して、「病院に行ったら?」と言ってくれました。
津留:最初は真面目に向き合ってくれなかったけど、「1人になる時間が大切だよ」と言ってくれて、一時預かりやファミリーサポートセンター(※)などを利用しました。お陰で楽になった!
※ファミリーサポートセンター…「子育てを応援してほしい人」と「子育てを応援したい人」が、地域のなかで相互援助活動を行う会員組織。お問い合わせは各自治体へ。
誰かに相談した?
前田:同じアパートの境遇が似ているママとお友達になって、話を聞いてもらっていましたね。
八尋:私は人に話すことが恥ずかしいと思っていたから友達には言えなくて。親からは「仕方ないよ」と言われました。乳幼児健診では良いママを演じて、産後の質問票に「育児はとても楽しい」と、嘘の回答をしちゃったり…。ダメな母親と思われるのが怖かったんです。
津留:その気持ち、分かります!私は質問票に素直に回答したら、後日保健師さんが自宅に来てくれたんです。その時に「同じ思いをしている人は、ほかにもいますよ」「ホルモンの影響もありますしね」と言われて少しホッとしました。素直に記入してよかったって思いましたよ。
立ち直ったきっかけは?
八尋:産後8ヵ月で職場復帰した時、先輩が笑いながら子育てやパパの愚痴を話していて、「こう思っていいんだ〜」と楽になりました。そんな風に思ってはいけない、ちゃんとやらなきゃ!って思い込んでいたので。
前田:私はとにかく同じアパートの友達の存在が大きかったな。 引っ越した今でも繋がっています。
津留:とってもしんどかった時、一度だけ「子どもがいなくなればいいのに」って思ったことがあったんです。でも訪問してくれた保健師さんの言葉に救われたり、1人の時間を持ったりしたことで心に余裕ができました。それからは段々と子どもが可愛くてたまらなくなっていきました。
悩んでいるママへ伝えたいことは?
「自分の幸せは
人と比べるものではないと実感」
八尋:1人ではないし、必ず終わりが来るもの。今の悩みが懐かしく思える日が来ます。私は2人目が産後5ヵ月ですけど、今は本当にハッピーです!
前田:人と比べないことかな。自分の幸せは自分の物差しで測るものだし。苦しいこともあるけど、子どもはママを幸せにするために生まれてきたから。力を抜いて子育てしてほしいな。
津留:たまには子育てを嫌だと思ってもいいと思うんです。頼る人がいなければ、公的な産後サポートサービスを利用して、子どもと離れて1人の時間を作るといいですよ。今はお金の心配よりも、自分が大切!
「もっと産後サポートサービスを
活用できる世の中に」
取材・文/佐藤理奈
次の記事では、九州大学病院 子どものこころの診療部 専任准教授の山下洋先生に、「産後うつの回復に必要なサポート」「周りはどう対応するべき?」など、専門家からのアドバイスを伺っています。